(2017年2月17日からカウント)
◎「『放射線量がレントゲンより低いから安心』は間違い」農民連食品分析センター所長の八田純人さん 測定器持参で講演 東京・国立市
農民運動全国連合会(農民連)の食品分析センター所長、八田純人(はった・すみと)さんは2011年10月2日、東京都国立市の東福祉館で、「放射線と食品汚染」と題して講演しました。同市内の市民団体「東地域で原爆写真と映画を見る会」が主催する「映画と講演のつどい」の中心企画として行われ、会場いっぱいの50人余りが参加しました。
八田さんは冒頭、放射線の健康への影響について、「私が大学で勉強した放射線防護の立場から言えば、放射線の量はゼロに近いほどいい」と強調。きちんとした調査もせずに、農産物の放射線量が「レントゲンやCTスキャンより低いなら安心できる」などという一部の楽観論を厳しく批判しました。
そのうえで、3月11日の東日本大震災で発生した福島第1原発事故が、日本全国の大気や土壌、海水などを放射能物質で汚染していることを「許しがたい」と告発。放射線の種類や食品への汚染の経路、人体への影響部位などを、わかりやすい例も使って説明しました。
さらに、日本各地から集めてきた土壌・落ち葉などのサンプルに対して、携帯式の放射線測定器をあてる「実験」も実施。この測定器は放射線量が高いほど、「ピー」という電子音が、より短い間隔で鳴るというものです。福島県浪江町の落ち葉のサンプルにあてると、「ビ・ビ・ビー」という大変速い連続音が鳴り響き、会場から驚きの声があがりました。茨城県や東京都板橋区の土壌サンプルの場合も、「ピッ、ピッ、ピッ、…」と、比較的早い電子音が鳴り、全国各地に広がる「ホットスポット」の危険性を示しました。
八田さんは講演直前に、会場周辺の放射線量も測定。屋根から雨が落ちる位置にある会場の外壁の下の方では毎時0.2マイクロシーベルトという、高い放射線量が測定されたことも報告。国立市が福島第1原発から約200キロメートルも離れているにもかかわらず、けっして安心できないことも明らかにしました。
最後に八田さんは、国や自治体が責任を持って、各地の放射線量をきめこまかく測定することや、農家が安心・安全な食料生産を続けるために、十分な価格保障・所得補償をすることが急務であることを強調。あわせて、放射線から身を守る方法として、@放射性物質のセシウムやストロンチウムが体内に蓄積するのを防ぐため、それらと化学的性質が似ているカリウムやカルシウムを含む野菜や牛乳などを積極的に食べることAコメについては、ヌカに放射性物質がたまりやすいので、玄米食はやめ、よく洗った白米を食べることB魚などは放射性物質が蓄積しやすい骨を除いて食べること――など、実践的な提案もしました。
(経済ジャーナリスト・今田真人=2011年10月2日記)
講演会場周辺の放射線量を測る八田さん=2011年10月2日、東京都国立市
毎時0.2マイクロシーベルトを記録した講演会場周辺=2011年10月2日、東京都国立市
測定器を持って講演会場周辺の放射線量を測る八田さん=2011年10月2日、東京都国立市
持参した各地の土壌サンプルなどの放射線量を測定する八田さん=2011年10月2日、東京都国立市
持参した各地の土壌サンプルなどの放射線量を測定する八田さん=2011年10月2日、東京都国立市
八田さんの講演には若い女性の参加者の姿も=2011年10月2日、東京都国立市
東京都日野市から参加した男性が持参した柿の実の放射線量を測る八田さん(測定器はほとんど反応せず、八田さんは「だいじょうぶだと思います」と発言)=2011年10月2日、東京都国立市