「狂気なしでは偉大なる事業は成し遂げられないと申す人々もいられます。それはウソであります。狂気によって成された事業は、かならず荒廃と犠牲を伴います。真に偉大な事業は、狂気にとらわれやすい人間であることを人一倍自覚した人間的な人間によって、精密に地道に、なされるものです」
この文章はいま、次のように読み直されうるでしょう。
「原発の電気エネルギーなしでは偉大な事業は成し遂げられないと申す人々もいられます。それはウソであります。原子力によるエネルギーは、かならず荒廃と犠牲を伴います」
私が引用します第２の文章は、新聞に載っていたものです。
原子力計画をやめていたイタリアが、それを再開するかどうか国民投票をした。そして、反対が９割を占めました。それに対して、日本の自民党の幹事長が、こう語ったそうであります。「あれだけ大きな事故があったので、集団ヒステリー状態になるのは心情として分かる」〈注参照〉
偉そうなことを言うものでありますが、もともとイタリアで原子力計画がいったん停止させられたのは、停止したのは、２５年前のことです。チェルノブイリ事故がきっかけでした。それから長く考え続けられた上で再開するかどうかを国民投票で決める、そういうことになった。その段階で、福島が起こったのであります。
いまの自民党幹事長の談話の締めくくりはこうです。「反原発というのは簡単だが、生活をどうするのかということに立ち返った時、国民投票で９割が原発反対だから、やめましょうという簡単な問題ではない」。そう幹事長は言いました。原発の事故が、そう簡単な問題であるはずはありません。福島の放射性物質で汚染された広大な面積の土地を、どのようにはぎとるか、どう始末するか、すでに内部被ばくしている大きい数の子どもたちの健康をどう管理するか。いままさに、はっきりしていることは、こうです。イタリアではもうけっして、人間の命が原発によって脅かされることはない。しかし私らは、私たち日本人は、これからもさらに原発の事故を恐れなければならないということです。私らは、それに抵抗するということを、その意思を持っているということを、先のように、想像力を持たない政党の幹部とか、経団連の実力者たちに思い知らせる必要があります。そのために、私らに何ができるか。私たちには、この民主主義の集会、市民のデモしかないのであります。しっかりやりましょう。（拍手）
〈注〉自民党の石原伸晃幹事長の２０１１年６月１４日の記者会見での発言「あれだけ大きな事故があったので、集団ヒステリー状態になるのは心情としては分かる。…『原発推進なのか、反対なのか』という問いがあるが、簡単な話ではない」（同日付の時事通信の配信から）
（経済ジャーナリスト・今田真人＝２０１１年９月１９日記）
