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赤旗編集局編『語り継ぐ・日本の侵略と植民地支配』を読む(2016年3月、新日本出版社)
【私のツイッター、2016年5月10日〜】


最近発売の赤旗編集局編『語り継ぐ日本の侵略戦争と植民地支配』(新日本出版社)にがっかり。14年9月の赤旗「検証記事」以来、1年半経つも思考は停止。「吉田証言」は虚偽でも、揺るがない「河野談話」″という。同証言を「信ぴょう性がない」から、根拠なく「虚偽」に改悪したのが新味か?


「慰安婦」強制連行を事実上、否定する、赤旗編集局編『日本の侵略と植民地支配』(新日本出版社)。「『強制連行』の根拠はあるの?」という質問に、「(連行方法は)さまざまな道があったことは『慰安婦』証言でもわかります」(P68)との回答。朴裕河「自発的売春婦」に近似する発想に驚く。


「『慰安婦』強制連行はなかった」という歴史修正主義者の攻撃に、赤旗の新著は2つの論理で対応。@「強制連行」をしたという「吉田証言」が「虚偽」であっても「河野談話」の正当性は揺るがないA「強制連行」の有無は問題の本質ではないので国際的には通用しないーーこれは反論ではなく屈服という。


赤旗編集局編『語り継ぐ日本の侵略と植民地支配』に数々の重大な疑問!「吉田証言」を取り消した14年9月の検証記事以降、次々と明らかにされた朝日第3者委員会報告や、取材インタビュー記録、公文書の発見、「済州島の慰安婦狩り」目撃証言など、なぜ一言も触れないのか。もしかして知らないの?


赤旗編集局編の新著に重大な矛盾あり。「重要なのは兵士による暴力的な『強制連行』の有無が『慰安婦』問題の本質ではない」(P68)と強調しながら、他の頁では、強制連行の被害証言が大きく紹介されていること。「朝鮮、台湾の少女たちは強制的、あるいはだまされて連れていかれ…」(P90)。


赤旗編集局編の新著は、「河野談話」の次の引用をしていない。「(朝鮮人慰安婦の)募集…も、甘言、強圧による等、総じて本人たちの意思に反して行われた」。「強制連行」を認めた「河野談話」を、「『強制連行』の有無が『慰安婦』問題の本質ではない」と言って、その意義を薄める赤旗は許せない。


「吉田証言」に関する、朝日第3者委員会報告や、取材インタビュー記録、公文書の発見などは、元「赤旗」記者の私の拙稿=『「慰安婦」問題の現在』(三一書房)所収=で言及。「赤旗」の新著の筆者は、元記者の著作は無視するのが「作法」らしい。


「吉田証言」は虚偽ではなく本当であるという著作を、元「赤旗」記者の私はこの間、2つ出版。『吉田証言は生きている』(15年4月、共栄書房)、『「慰安婦」問題の現在』(16年4月、三一書房)だ。それを無視した赤旗編集局編『語り継ぐ日本の侵略と植民地支配』の出版は、不誠実極まりない。


「強制連行」をしたという「吉田証言」が「虚偽」であっても、同証言を反映していない「河野談話」の正当性は揺るがないという、赤旗編集局の新著の主張が笑わせる。警察官僚は93年の同談話より前に、「吉田証言」を裏付ける種村文書を知っていた。
masato555.justhpbs.jp/newpage122.html



「吉田証言」を裏付ける種村一男文書は「河野談話」以降の96年末、日本共産党参院議員の吉川春子氏に警察官僚が手渡し、公表した。赤旗編集局の新著『語り継ぐ日本の侵略と植民地支配』は、同党の元国会議員や元「赤旗」記者の業績をいっさい無視。
masato555.justhpbs.jp/newpage122.html



「強制連行」をしたという「吉田証言」が「虚偽」であっても、「河野談話」の正当性は揺るがないという、赤旗編集局の新著の主張の根拠が笑わせる。旧内務省官僚に繋がる石原信雄官房副長官(当時)と安倍内閣の閣議決定。いわくつきの2人が「吉田証言」を否定したことが根拠とは、その見識を疑う。


新著『「慰安婦」問題の現在』(三一書房)で明らかにしているが、旧内務省と旧厚生省が、朝鮮人女性を「慰安婦」として「強制連行」した戦中の担当官庁だった。吉田清治氏が属した労務報国会は、警察(旧内務省所属)の外郭団体で、朝鮮人「強制連行」を担った。石原氏はこの旧内務省に繋がる人物だ。


安倍晋三首相や石原信雄・元官房副長官が「吉田証言」をなぜ「眉唾もんだ」と否定するのか、赤旗編集局編『語り継ぐ日本の侵略と植民地支配』の筆者は考えたことがあるのか。安倍首相は、吉田氏が戦中に労務報国会動員部長をした山口県出身。石原氏は、労務報国会の監督官庁であった旧内務省関係者。


自分の主張に反する事実は無視し、被害証言を真実としながら、加害証言を虚偽とする意味不明の著作。「慰安婦」強制連行の被害証言を紹介しながら、自分の組織の記者が過去に紹介した加害証言を虚偽とする、矛盾だらけの著作。赤旗編集局編『語り継ぐ日本の侵略と植民地支配』(新日本出版社)。


「『強制連行』の根拠はあるの?」と自問し、「さまざまな道があった」(P67〜)と答えるトンデモ著作。紹介されている証言は「村の区長と班長が日本人と一緒に来て『娘を、軍服を作る工場に出せ。拒否すれば反逆者だ』と脅されました」(P90)。これは強制連行ではない?。赤旗編集局編の新著。


「どんな方法で連れてこられたにせよ、ひとたび…『日本軍慰安所』に入れられれば、強制使役の下に置かれた。これこそが問題の本質です」(P68)と主張する赤旗編集局編の新著。「慰安婦」の募集で、暴力を受けず騙されたとしても、気づいたら逃げることはできなかった。赤旗記者の頭は脳天気。


赤旗は都合の悪い事実だと無視するクセがある。「パナマ文書」報道で、習近平の名を一貫して隠してきた。赤旗本日付は「『パナマ文書』21万法人公開」だが中国の名はない。「毎日」同日付は皮肉にも、中国の法人・個人の利用が突出して多いと報道。「根も葉もない批判だ」という中国政府はにんまり。


「慰安婦」の募集で業者がたとえ関与していても、トラックや列車、船で前線の慰安所まで、何十日もかけて運ぶ。すべては日本官憲や日本軍兵士が監視し、逃げようとすれば暴力を振るった。「さまざまな道があった」(P67〜)と強制連行以外の道があったかのようにいう赤旗編集局編の新著がうざい。


考えても見るがいい。1937年の日中戦争開始前なら、業者による人身売買もあったろう。しかし、侵略戦争の出征先も広がれば、国家予算も枯渇する。38年には国家総動員法も公布。日本軍部や官憲が資金を節約できる「慰安婦」強制連行を考えないはずがない。赤旗編集局の新著の分析は残念すぎる。


「慰安婦」強制連行は、未成年の少女を「慰安所」に何日もかけて連行する人間や資金、体制がなくては成立しない。加害者がいるから被害者がいる。「慰安婦」被害者の証言は信じるが、加害者の証言は「眉唾だ」という、いまでも横行する歴史修正主義の論法を憂う。赤旗編集局の新著も例外ではない。


憲兵や特高が闊歩した1940年代の軍国主義日本支配下の朝鮮で、民間業者が自主的に、貧しい親から多数の少女を買い、何日もかけて列車や船、トラックに乗せ、戦場の「慰安所」に連行したという話ほど、現実離れした、おめでたいものはない。「慰安婦」人身売買説は、歴史的検証に耐えられない。


永田浩三氏らの共著『NHKが危ない!』(14年、あけび書房)に胸打たれる。「職員が自由に外に向けて発言ができ、組織内でもおびえずに仕事ができる環境」(P188)をつくることが、民主的ジャーナリスト組織の再生の道と説く。受信料と同様、購読料で支えられる赤旗編集局にも言えるだろう。


「(職員の)内部的自由と外部へ発信できる自由の両方がなくてはならない…。NHKをよく変えるためには市民と職員の両方の力が必要」(P189)。「慰安婦」問題報道番組改変裁判で、内部告発をした元NHK幹部職員、永田浩三氏らの著書『NHKが危ない!』(あけび書房)の言葉がすばらしい。


「NHKの人間に内部的な自由が存在しなかったがゆえに、記者会見という方法しかとれなかった」(永田浩三等『NHKが危ない!』P171)。番組改変問題の裁判で、内部告発をしたNHK職員に言及した個所が身につまされる。拙著『吉田証言は生きている』(共栄書房)の出版の時がそうだった。


「NHKの人間には外にむかって発信するという言論の自由がありません」(『NHKが危ない!』P171)。「ネットで発信してもいい、実名で原稿を書いたっていい…。そんな時代がきてほしい」(P185)と永田浩三さんはいう。同感だが、赤旗編集局の状況はもっとひどい。労働組合もない。


「権威に頼り自分で考えない。これは、知的で合理的であるべき放送ジャーナリストにとって、致命的な欠陥です。…視聴者が知りたいことをわかりやすく伝える。そのことのために受信料をいただいている」(『NHKが危ない!』P159)。永田浩三氏の言だが、赤旗記者にすべて当てはまるのが深刻だ。


不破哲三氏など党幹部の権威に頼って記事を書くクセがある赤旗記者。長年勤めた職場だけに、権威主義の横行は痛いほどわかる。しかし、ジャーナリストである以上、国民の中、すなわち、現場にこそ、信頼できる情報源があることを認識すべきだ。『NHKが危ない!』(あけび書房)に学ぶことは多い。


後退続ける日本共産党の「慰安婦」政策。「赤旗」14年3月15日付の志位論文は93年「河野談話」までに、強制連行を示す公文書が発見できなかったという日本政府のウソの言い訳を事実認定。「赤旗」同年9月27日付の無署名論文は過去に同紙が報じた唯一の加害証言(「吉田証言」)まで取り消す。


『週刊金曜日』15年12月11日号は、「慰安婦」強制連行を示す公文書、旧厚生省「極秘通牒」を発見したという拙稿を掲載。16年4月発行『「慰安婦」問題の現在』(三一書房)は、その公文書の復刻写真と解説論文を収録。こうした事実を「赤旗」はいっさい報じない。その頑なさが悲しい。


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