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(2017年7月9日からカウント)


「事実と道理に基づいて考える」ための反面教師
(2017年7月7日〜のツイート再録)
=経済ジャーナリスト・今田真人=


@某革新政党は以下の論文で、「歴史修正主義者」の秦郁彦氏をまともな歴史研究者として扱い、その反戦平和の伝統を汚してしまった。この取り返しのつかないほどの誤りを、いまだに自覚できないところが救いがたい。
「歴史を偽造するものは誰か」http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-09-27/2014092704_01_0.html … …


A「この党の言うことだから正しい」と思った瞬間から、支持者ではなく信者になっていることを自覚してほしい。


C「ポスト・トゥルース」が言われる昨今。「事実と道理に基づいて考える」が、いまほど大切なときはない。加計学園問題での文科省の内部文書も、その事実のスクープがあり、「総理のご意向」という文面からの道理に基づき、首相の圧力が疑われている。
《参照》イギリスの流行語「Post-truth」が意味すること





D菅義偉官房長官は、内部文書という事実に基づく疑惑に対して、「怪文書だ」と根拠もなく反論。あとで撤回に追い込まれた。吉田清治氏の証言を事実ではなく、歴史修正主義者らの権威で否定した某革新政党も、同じ道をたどるだろう。




E「事実と道理に基づいて考える」。その大切さを知る反面教師がこの論文である。論文は、「吉田証言」について「研究者らによって否定され、『河野談話』でも根拠にされませんでした」と言う。問題は、誰が否定したかでなく、どういう事実に基いているかなのだが…。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-09-27/2014092704_01_0.html


F「吉田証言」については秦郁彦氏(歴史研究家)が92年に現地を調査し、これを否定する証言しかでてこなかったことを明らかにしました(「産経」92年4月30日付)。→これは、秦氏の「信者」、ネトウヨの文章ではない。某革新政党の論文だ。秦氏の調査を事実として認識しているのが救いがたい。


Gみずから裏も取っていない伝聞の羅列。この論文の特徴だ。こっけいなのは、石原信雄氏の「証言」。なんとテレビ朝日の番組での石原氏の発言の録音起こしである。「あれはこう、なんていうか、眉唾もんだというふうな議論はしていましたね、当時から」。論文筆者がテレビを見て書きましたというお粗末。


H石原信雄氏らがどういう事実を以って、そう言ったかが不明だ。同じテレビ番組に出てくる「担当者」が「私たちは吉田さんに実際会いました。しかし、信ぴょう性がなく、とても話にならないと。まったく相手にしませんでした」と言ったという話も同じ。これは、事実を示さない印象操作そのものである。


I「担当者」はなぜ、「信ぴょう性がなく、とても話にならない」とまで思ったのか。普通に考えれば、外政審議室という、秦郁彦氏の「お友達」の官僚たちが、秦氏を厳しく批判する吉田清治氏に反感を持ったということだろう。この胡散臭いテレビでの「証言」を延々と紹介するところも信じられない。


J事実と道理に基づかない論文は、決定的な矛盾を犯す。 「吉田証言」について論文は「1942年から3年間…吉田氏が…西部軍の命令書を受けて、韓国・済州島で暴力的に若い女性を強制連行し、『慰安婦』とした」と紹介。それが秦氏による現地調査で否定されたという。なら、強制連行はなかったのか。


K済州島での強制連行は、秦氏が現地調査で「(吉田証言を)否定する証言しかでてこなかったことを明らかにしました」と言う。一方で論文は「募集の過程で、かなり強引な募集が行われたことがあったようです」との石原氏の「証言」を採用。済州島での強制連行はあったのか、なかったのか。意味不明だ。


L当時の外政審議室長、谷野作太郎氏は言う。「私の韓国の友人。…彼は『子供のころ、自分の村では年ごろの娘を外に出すなと言われたものだ。それでも彼女らが横付けされたトラックに乗せられ、泣き叫びながら連れ去られていくのを目にしたことがある。そこにはオマワリやヘイタイもいた……」と。


M某革新政党の論文は、石原信雄氏らの事実に基づかない発言を使って、吉田証言否定に懸命だが、「河野談話」の調査に当った外政審議室の責任者のまともな証言は目に入らなかったようだ。この証言は、毎日13年8月28日付夕刊に掲載された。




N河野談話もそうだが、外政審議室もこういう文書を出している。「慰安婦の募集――官憲等が直接これに加担する等のケースもみられた」。某革新政党の論文のタイトル「歴史を偽造するものは誰か」が、ブーメランのように返ってきている。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/taisen/pdfs/im_050804.pdf …


O毎日新聞2013年8月28日付夕刊の記事「特集ワイド――『河野談話』『村山談話』谷野作太郎・元駐中国大使に聞く(下)」の切り抜きが残っていた。彼の主張には全面的には賛成できないが、事実を証言した部分には重みがある。左の写真の1段目「私の韓国の友人。…」以下の文章がすばらしい。








P吉田証言を虚偽だとするキャンペーンは、加害証言をする者をおとしめる圧倒的な国民世論をつくった。第二の吉田清治氏は、この異常な雰囲気の中では出るはずもない。自分の祖父らの世代の加害行為を隠そうとする国民は、いくら被害者に寄り添うと言っても、被害国からは信用されないのは当然である。



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