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(2020年8月19日からカウント)


日本共産党第28回大会の批判(2019年9月16日~のツイート再録)
 (フリージャーナリスト、今田真人)


(総リード)
 日本共産党は2020年1月14日から同月18日までの5日間の日程で、第28回党大会を開催した。それに前後して、私は一連の批判的なツイートを連打した。同党大会について、私に若干の期待があったため、そのツイートをHPに記録として残すことをためらってきた。しかし、大会後8カ月もたつのに、相変わらず、「特別月間」という、数の追求だけの無意味な党勢拡大運動に終始している。そのため、私のツイートで展開した党の政策・理念・組織の改善意見は、役割を終わるどころか、ますます重要性を増していると思う。そのため、それをここにあらためて紹介したい。
                  2020年8月19日 フリージャーナリスト・今田真人



①日本共産党の7中総が終わった。いまや同党は外部の批判の声が全く聞こえないらしい。参院選の総括では、あれだけ話題になった象徴天皇制への態度変更に言及せず。国際情勢では「共産党」への疑念を深めた香港情勢の分析もない。ちまたで多くの人が感じている疑問に答えられない体質が深刻である。


②全体的にいって自己批判がない。象徴的なのは、党勢の長期後退の「客観的要因」に1980年の「社公合意」を挙げていること。悪いのは他党であって、共産党中央ではないという独善である。権力側が野党に分裂攻撃を仕掛けるのは、昔からである。当時もいまもそれに打ち勝つ方針がないことが問題だ。


③党勢拡大の「最大の弱点は、党の自力の問題」というが「自力が足らないから自力がつかない」という同語反復に陥っている。なぜ自力が足らないのか、それを政策論でも組織論でも解明する意欲が感じられない。政策論は①で触れた。組織論では党内民主主義の欠如である。上意下達からは何も生まれない。


④党内民主主義について、少し具体的に指摘したい。いまの党員は事実上、ツイッターなどで党の方針に対して批判的な意見を言うことができない。これが新聞・テレビなどのマスコミでしか個人的意見を公表できなかった時代との決定的違いだ。それができない組織に、いまの若者が入らないのは当然である。


⑤党員の個人的意見を自由にツイートできない政党・組織なんて、時代遅れもはなはだしい。第28回党大会では、それを事実上、禁じている規約の大幅改正が当然、提案されるべきだと思ったが、残念ながら、まったくなかった。私の意見など、猫に小判、豚に真珠であった。
http://masato555.justhpbs.jp/newpage125.html


⑥香港の「逃亡犯条例」改正案に反対する市民デモは、日本のマスコも連日、大きく報道した。「赤旗」も同様な報道をした。だが、香港市民の言論活動を弾圧しようとしているのは中国共産党だ。「共産党」だから、日本のマスコミも大きく取り上げたのである。それに打ち勝つ政策と行動こそ必要である。


⑦7中総は「日韓関係の悪化」に言及。「徴用工」問題での貿易上の報復措置について「『政経分離の原則』に反する『禁じ手』」という批判を繰り返している。この原則は自由貿易の原則であって、共産党が主張するようなものではない。外部の批判が全く聞こえないのか。報復行為自体が問題なのである。


⑧先に触れたが、1980年の「社公合意」が日本共産党の長期後退の「客観的要因」ではない。同年は89年の天安門事件・ベルリンの壁崩壊、91年のソ連崩壊など、他国の共産党が国民から信頼を失う直前の時期である。日本共産党の長期後退の決定的要因は、共産主義への国際的な懐疑の深まりにある。


⑨日本共産党の前進に必要なのは「他国の共産党とは違う」などという思考停止にとどまるのではなく、一歩踏み込むことである。国際的運動として始まった共産主義のあり方を批判的に自己点検し、その良き伝統は生かしながら、悪しきところは自己批判して、民主主義的な政党として再生することであろう。


⑩共産主義の自己点検では、1980年以来のお隣りの韓国の民主化が盲点になっていないか。「共産主義」を名乗る北朝鮮の干渉や挑発に抗して、軍事独裁政権を倒し、民主化を勝ち取った韓国の闘いこそ、日本共産党は、もっと注目すべきである。
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⑪日本共産党第28回大会が終わった。一言でいって、内外のまともな提言・批判に耳を傾けることのできない、自己改革能力を失った党であることを示した。一つは、党大会前発行の『議案への感想・意見・提案』(赤旗臨時号)に載った党内のまじめな少数意見を完全に無視したことである。いくつかを紹介する。


⑫まず、東京都の党員(名前は消した)の意見(写真)を紹介する。彼は「党内にいろいろな意見があることを国民が知ることは党に不利なことではなく党への信頼をますことになります」と言う。その為の規約改正を提案している。「日本共産党の最大の特質は自己改革能力をもっていること」(宮本顕治)






⑬この東京都の党員は「少数意見、党中央への異論をふくむ発表の権利の保障」について「『共産主義は民主主義と対立する』という広範な国民の中にある誤解を払拭するためにとても大事」と強調。さらに党大会代議員の直接選挙、委員長の全党員選挙、任期制導入まで提案したが、大会はすべてを無視した。


⑭同様の意見は、前党大会と比べて明らかに増えている。埼玉県の党員(名前は消した)の意見を紹介する(写真)。「私は以下の三点を提案します。今まで共産党の支配する国がすべて国民の自由を奪い、独裁政権になってしまった理由を考えての提案です。第1に、委員長の公選を実施すること」云々。






⑮埼玉県の党員は、委員長や書記局長(書記長というのは誤記)の任期を8~10年程度にすることも提案。党大会議案への意見を赤旗本紙に掲載すべきことなども提起。それらの改革で「党の中に多様な意見があることが共産党の活力になり、若い有能な人々を共産党にひきつけることにもなる」と。大賛成。


⑯東京都のM・Y氏も同様。私は同氏の提案すべてに必ずしも賛成ではないが、直接選挙で選出する党代表の新設、重要な決定の直接投票など、傾聴に値する。「党の組織原則が意見の多様性の尊重や民主主義の尊重の面で他党よりも先進的なものとなるよう、さらに大きく見直すべき」。もっともである。






⑰同様な意見ではあるが、京都府の党員の意見も傾聴に値する。とくに「現状では多くの国民は、共産党は上意下達的で閉鎖的な組織であり、内部で意見の相違に基づいた自由で闊達な議論が行われているとは思っていない。…異論を活かせず、排除するような組織は衰退を免れない」との指摘は大賛成である。








⑱別の京都府の党員の意見も紹介する。「地区・県・中央の委員長は全党員による直接選挙で選ぶ」とか、その選挙では立候補者が演説会を設け、党員と対話したり、インターネットで配信したりせよというのも大賛成。重要政策での全党員アンケートと公開も大賛成。いまの党に欠けているものばかりである。




⑱蛇足。党大会での不破哲三氏の発言で、最後の方の「マルクス、エンゲルスの遺訓は『民主共和制』」に注目されたい。民主共和制とは君主制の反対概念である。志位氏の象徴天皇論への批判だが、大会はスルー。この89歳の老幹部は現役として再選された。党大会の議論が内実のないことの象徴である。








⑲最後に私の意見集を紹介。私は赤旗記者時代、不破氏が先導した中国への誤った評価のために、中国への日本の大企業の進出や、それによる日本の産業空洞化を食い止めるための、一連の告発記事の掲載を封じられた。そうした過去の過ちを顧みない大会など何の役にも立たない。
http://masato555.justhpbs.jp/newpage125.html


⑳本日2月2日付「しんぶん赤旗」に、本年1月期の読者拡大の結果が載った。日刊紙1342人減、日曜版4610人減、電子版84人増。合計で5868人の減紙である。党大会が開かれた月に、これだけ機関紙が減ったことこそ、国民がこの党大会に深く失望したことを示している。猛省を求めたい。




㉑今回の共産党大会で最も幻滅したのは、89歳の不破哲三氏が現役に留まったこと。浜野副委員長は報告で「年齢だけの基準で、党の任務を果たせるか、果たせないかを判断するのは、科学的な立場ではない」と強弁。これでは定年制がそもそも無意味となる。共産党は黒川検事長の定年延長を批判できない。


㉒定年制は、有為な後継者に組織運営を譲る意味でも、特定個人への権力集中の弊害を防ぐという意味でも、重要な民主的制度だ。黒川検事長問題は、政治家をも捜査・起訴できる検察組織のあり方という特異性はあるが、官僚組織のあり方という共通性もある。共産党は、国民の目を節穴だと侮ってはいけない。


㉓官僚組織は、国民の直接選挙で選ばれないという欠点を、定年制や任期制で補っている。共産党の幹部も党員による直接選挙ではなく、何重もの間接選挙で選ばれる。だからこそ、官僚組織と同じ制度が必要なのである。今回の党大会は、そうした民主主義の普遍的原則をも踏みにじった点で幻滅感が大きい。


㉔私の党除籍の原因は、吉田証言の記事を赤旗編集局が取り消したことについて、ツイートで(取り消しの誤りを認め)謝罪を求めたこと。ある党職員OBが言う。「党が誤りを認めたら負けである。誤りを認めずに事実上の訂正をするように内部で意見を上げるのが党員の義務だ」。だが、誤りを認めない組織はまた同じ誤りを犯すだろう。


㉕その共産党職員OBは続ける。「今田君がツイートで公然と党を批判し、元赤旗記者の肩書で本まで出した。それは党の誤りを正すというより、自分の名前を宣伝したいからだろう。もしかしたら、赤旗記者に復帰したいと思っているのか」。誤りを絶対認めない党の体質は、仲間をここまで辱めて平気である。


㉖「赤旗」3月2日付が2月の読者拡大の結果を伝えている。「何としても2月前進を」という「決意に満ちた奮闘」が広がったといいながら、「日刊紙118人減」とは日本語になっていない。それとも読者拡大とは、日刊紙を日曜版に切り換えることなのか。精神主義では結果が出ないことは証明済みである。




㉗「赤旗」拡大の2月の結果は、党員の「奮闘」が足らなかったからではなく、そもそも共産党の組織方針が間違っているからである。機関紙は本来、党内民主主義のかなめであり、上意下達の道具にしては力を持てない。正しい政治方針も、党内民主主義のない組織では実現できない。


㉘私はこの間、共産党内の自己改革勢力を信じ、その復元力を期待してきましたが、28回党大会はそれをみごとに裏切ったと思います。日本共産党にこの先、日本改革の中心勢力として期待をいだくことは、木によりて魚を求む、のたぐいで、無理であることを痛感しました。別の道を考えます。


㉙3月の「赤旗」読者拡大の結果を伝える「赤旗」2020年4月2日付。日刊紙592人減、日曜版3687人減で、合計で4279人の大幅減である。数字の追求のような運動では、決して人の心を動かすことはできない。共産党の組織方針の根本的な見直しが必要である。




㉚共産主義とは本来、人民の人民による人民のための抜本的な社会変革の運動である。しかし、いまの日本共産党は、それにふさわしい運動体になっていない。「赤旗」を読めば、社会変革を前進させることになるのか。共産党員になれば、社会変革の運動の主体になりうるのか。答えはすべてノーである。


㉛むしろ、「赤旗」を読めば、共産党中央のことしか分からなくなり、党員になれば、自分の頭で考え意見を発表することが禁止される。個人の尊厳が否定され、すべてが志位氏や不破氏など、党幹部のご高説を聞くだけの存在になる。中国や北朝鮮とそんなに変わらない。こんな組織に加わる人はいないだろう。


㉜共産党は今年1月の党大会で、中国を「社会主義をめざす国」と評価していた旧綱領を改定し、この規定を削除した。しかし、04年に旧綱領にこの規定を導入したことは間違っていないという無謬主義の態度をとった。これでは中国に対する国民多数の否定的認識への後追いであり、先駆性は生まれない。


㉝これがどんなに重要なことかは、新型コロナ問題でのマスク不足の原因にもかかわっている。「日本国内で流通するマスクの8割弱は中国から輸入されている」(読売)という事態がなぜ起こるのか。それは中国の為替政策への批判を封じた旧綱領の規定(2004年導入)にある。
《参照》
読売新聞2020年3月28日付「中国からのマスク含む『繊維製品』輸入、2月は51・5%減…入手困難の原因に


㉞詳しくは拙著『円高と円安の経済学ーー産業空洞化の隠された原因に迫る』(2012年、かもがわ出版)を参照されたい。中国の人件費は日本の約5分の1。これでは国内生産を急増させても、圧倒的に安価な中国製マスクの輸入が本格化すれば、国内生産は壊滅してしまう。
https://amazon.co.jp/%E5%86%86%E9%AB…


㉟この日中の為替構造の問題を放置しては、新型コロナウイルスによる経済的打撃を根本的には克服できない。世界に猛威をふるう感染症は、今回だけでなく、将来また次々と発生するだろう。そのことを見据えた自立的な経済構造の再構築を考えておかなければ、悲劇は繰り返されるだろう。


㊱自立的な経済構造の再構築なくして、日本の労働者・勤労者が、まともな条件で働き、まともな賃金を受け取ることはできない。2000年代初頭から猛威を振るった大企業の中国への進出と国内産業の空洞化。この本当の原因を分析し、それに対する対策を考えない限り、日本の経済の再生はないだろう。


㊲2000年代の日本の大企業の中国への進出と産業空洞化、労働者の大量解雇・非正規化が防げなかった要因に、日本共産党中央の中国美化の姿勢があった。そして、その構造を隠すために、政権与党が振りまいたイデオロギーに「デフレ経済論」があり、共産党も同調したのである。


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