(2022年5月17日からカウント)
再論・象徴天皇制(2021年12月30日~のツイート再録)
(フリージャーナリスト、今田真人)
(総リード)
与党が2021年秋の衆院選挙で、天皇制廃止問題を使った野党共闘分断攻撃をしたのにこりて、日本共産党の指導部は最近、現在の象徴天皇制について、憲法の平和的民主的条項と矛盾しないものなどと強弁するようになっています。これは、「民主主義および人間の平等」「民主共和制の政治体制の実現」(いずれも綱領から)という、日本共産党が本来目指している理想実現への本気度に疑問符をつけるものであり、国民の同党への素朴な期待を裏切るものです。以下、同党の天皇制美化論に対する私の一連の批判ツイートを紹介します。「再論・象徴天皇制」としたのは、以前、「『象徴天皇制』について~志位和夫批判(2019年5月9日~のツイート再録)」というツイート集を公表しているためです。
こういう屁理屈満載の論文(2021年12月28日付)を掲げるまで、「赤旗」の右転落は著しい。憲法前文は、国民主権が「人類普遍の原理」だとし「これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する」と宣言。矛盾した条項が併存するのが憲法である。守るべきは、天皇条項(1条から8条)ではない。
山猫 / REDs ☭ @yamaneko_strike
23大会の、綱領改定の討論についての不破議長の結語が全く顧みられていない点が問題と思います。28大会以前に常幹から「天皇の制度に反対しない」との発言が相次ぎ、てっきり大会で綱領的改訂があると思いきや何もなし。矛盾の放置が、当面の政策に天皇の制度を含めないことと綱領的見地の混同と強弁に
憲法の前文は、憲法の他の条項の上位に位置する。この前文の精神を具体的に列挙しているのが、第9条以下の条文である。天皇条項は、日本帝国敗戦後の米軍占領期において、日本の旧支配層と占領軍との妥協の産物として例外的に書き込まれた。天皇条項が前文の精神に反することは、自明である。
象徴天皇制は、憲法14条の「法の下の平等」や、第24条の「両性の合意のみに基づく婚姻」など多くの条項に反する。最近話題になった皇族・真子さんの結婚は、24条の精神に沿ったものだからこそ、多くの国民が祝福した。天皇条項を守るのではなく、平和的民主的条項こそ守るべきである(旧綱領)。
らとろん @latlon360
引用紙面、記事の末尾はかなり気色ばんだ語調ですが、そのままブーメランですね。下記リンク先の党首声明を「取り繕おうとして」いるだけではないのかと。
こうして自己保身に走るたびに社会に存在する天皇制批判の声を敵に回している事に共産党は気づいているのでしょうか。
〈天皇の制度と日本共産党の立場 志位委員長に聞く〉
結論。この問題で、小池書記局長は「党の綱領には、憲法の天皇の条項や前文も含め、すべての条項を守ることを明記している」という。矛盾した条項が併存するのに、憲法のすべての条項を守るというスローガンは、本当の意味で憲法の基本精神を守ることにはならない。(続く)
〈共産 小池書記局長「公明代表発言 荒唐無稽のデマ」撤回求める〉
(承前)蛇足。綱領に明記されている文章は「現行憲法の前文をふくむ全条項をまもり、とくに平和的民主的諸条項の完全実施をめざす」である。「天皇の条項を含め」云々は綱領にはない。ないものをあるというのは、「創作・捏造」ではないのか。念のため。
〈日本共産党綱領〉
①以上の私の天皇についての主張は、私だけの特異なものではない。つい最近まで、日本共産党が主張していたものである。以下、戦後の日本共産党の中心幹部であった宮本顕治氏の論考を紹介する。まず、1989年出版の『天皇問題――日本共産党の見解』所収の宮本顕治「天皇問題をとりあげる立場」から。
②「天皇制にたいするわが党の基本的見地は綱領にあります。天皇制廃止という問題は、人民民主主義革命が成熟して、国民の多数がそれをもとめ必要とする状況になったさいにこのプログラムが実現される」。〈注〉宮本顕治氏は明白に天皇制廃止を綱領路線上、人民民主主義革命での改革と位置付けている。
③「憲法とわが党のかかわりの根本についていえば、憲法制定時のわが党はご承知のように、徹底的に民主的な改革のために党の憲法草案をつくりました。当然、共和制の憲法草案であります。政府は民主的改革を流産させるものとして、象徴天皇制という主権在民に反する折衷案をつくりました。(続く)」
④「(承前)国会の採決において、わが党は、わが党の憲法草案の立場から当然政府案に反対いたしました。しかし、同時にこの憲法には世界と日本人民の活動の反映として、明治憲法になかった新しい平和的民主的な条項も盛られることになりました。(続く)」
⑤「(承前)したがってわれわれは、憲法の平和的民主的条項は擁護しています。この立場は歴史的、理論的に一貫性のあるものであります。日本の政治全体がそういう矛盾をもっているものでありますから、主権在民の原則に反するものには反対します」。
⑥〈注〉宮本顕治氏はここで、象徴天皇制について「民主的改革を流産させるもの」「主権在民に反する折衷案」だったと批判。「主権在民の原則に反するものには反対します」とし、象徴天皇制反対の立場を明確にしている。この論考は、宮本氏の個人論文ではなく当時の中央委員会総会の決定である。
⑦同じ本(1989年発行)には、村上弘委員長(当時)の1988年の赤旗まつりでの演説も収録。これも以下紹介したい。
「主権在民とあいいれない象徴天皇制…現憲法は、その前文で、『ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する』と明記しています。(続く)」
⑧「(承前)…戦前の絶対専制支配の天皇制はもとより、現憲法の『象徴天皇制』も、この『主権在民』の原則とは根本的にあいいれないものであります。天皇制は、ほんらい、廃止されるべきものであります」。〈注〉共産党が、象徴天皇制は主権在民(国民主権)と合い入れないと主張していた証拠である。
⑨先に紹介した2021年12月28日付の「赤旗論文」は「綱領は…天皇の制度が国民主権と『両立しない』ことを主張していることを意味するものではありません」としている。1989年当時の党文献は「あいいれない」と言っていた。共産党の右転落の落差は想像を絶する。
⑩かつての日本共産党の中心幹部、宮本顕治氏の著書『天皇制批判について――戦後初期論集1』(1987年発行)のまえがきの一部も紹介したい。「世界の公理からすれば明白極まる、天皇制の頂点に立った戦犯第1号が、アメリカ帝国主義の対日支配と極東戦略による政治的な利用のために(続く)」
⑪「(承前)延命されただけでなく、戦後の対米従属の国家体制の有力な武器として装飾をこらされて、新しく国民尊敬の対象にされたのである。曰く『国民の象徴』。これはまさに、世界にも稀な『時代錯誤の象徴』でしかない。(続く)」
⑫「(承前)いまだに、日本の何千何億のマスコミは、この天皇一族を敬語で呼んで、日夜日本人民の感覚から合理性を奪いつつある」。〈注〉象徴天皇制にたいする宮本顕治氏の至言は、象徴天皇制を合憲とし美化してやまない最近の赤旗論文や党幹部の軽薄な文章と比べると、私には光り輝いてみえる。
岸田文雄よ、泉健太よ。そして、マスコミ各社よ。あなた方そろって、天皇教の信者なのか。
~澤藤統一郎の憲法日記
⑬上記の「(象徴天皇制の美化は)日夜日本人民の感覚から合理性を奪いつつある」との宮本顕治氏の至言。年が明けた1月19日付の「赤旗」記事「女性天皇は憲法に照らして合理性持つ」も、共産党書記局長の頭から合理性を奪いつつある典型的な事例であろう。新年早々、頭が痛い。
⑭日本共産党は1946年8月24日、第90帝国議会で、現憲法の「草案」にたいして反対演説を行った。正月、帰省先の広島の古本屋で、その演説を収録した『野坂参三選集・戦後編』を購入。その一部を紹介する。野坂氏は当時、東京選出の日本共産党衆院議員である。写真は同選集掲載のもの。(続く)
⑮(承前)「当憲法草案が、現在行われている憲法(明治憲法)よりも進歩的であるという事実を、われわれは率直に認めるものであります。しかし、この草案の条文、および本議院における諸大臣の答弁を慎重に吟味する時、この草案は『ポツダム』宣言の要望するような、(続く)」
⑯「(承前)またわが国民の欲するような、完全な民主主義を実現せず、むしろ不徹底とあいまいさと矛盾に満ちているとわれわれは考えるのであります。…吉田内閣は、この草案を余りに民主主義的にすることは、自己の意思に反するとともに、国内の保守反動勢力の反撃にあうのである。(続く)」
⑰「(承前)かくして内外の民主勢力と国内の保守勢力との間を政府がうろついた結果の苦悶の産物が、すなわちこの憲法草案である。形だけは民主的であるが、内容はできるだけ封建的遺制を残そうとする苦心の跡が歴然と現れている。共産党はこの草案ができるだけ民主主義的に修正されることを(続く)」
⑱「(承前)主張した。しかしこの主張はことごとくいれられなかったのであります。そこで、共産党はこの草案の衆議院通過に反対せざるを得なくなった。以下にその理由を簡潔に述べたいと思います。…共産党は、当憲法草案が発表された時、主権在民を明記することを主張しました。(続く)」
⑲「(承前)幸いにして、われわれの要求はいれられ、前文にこれが明記されました。これはこの憲法草案の一歩前進である。しかし、それではこの草案は果たして主権在民の思想を一貫したものであるかどうか。遺憾ながら実質はそうではない。…第一に、もし国民に主権があるならば、(続く)」
⑳「(承前)なぜ憲法の第一章にまず国民についての規定を設けないのか。この草案では第一章に国民が来るのではなくて、国民のなかの一人にすぎない天皇の規定が来ております。金森国務大臣はこれを説明していわく、天皇は国民の統合の象徴だから…しかし、どうして象徴を前にして、(続く)」
㉑「(承前)実体をあとにしなければならないのか。ここに問題がある。…なぜ政府はこのようなことをするのであるか。それは、すなわち天皇を神聖化し、天皇に特権的地位を与え、天皇を国民の上に君臨させようとする政府の意図があるからであります。第二に、そもそも民主主義とは、(続く)」
㉒「(承前)国民が自らの手によって政治を行なうことであります。したがって国家機構のなかに、国民の意思によって自由に選任し、あるいは罷免することのできない機関を設けることは、これは民主主義ではない。…当草案には国民が選任し、罷免することのできない世襲の天皇を存置し、(続く)」
㉓「(承前)その天皇の手に諸種の重要な特権を与えております。すなわち当草案第6条から第7条によって、天皇の手には11のいろいろな政治的な、あるいは儀礼的な国事が与えられている。その中には総理大臣の任命、国会の召集と解散、総選挙の執行のごとき重要な権限が含まれております。(続く)」
㉔「(承前)かくのごとき重要な権限を天皇に与えることは、民主主義の原則からいえば明らかに逆行するものである。これらの天皇の権限は、国会の指名や、あるいは内閣の承認と助言が必要でありますが、しかし、天皇が総理大臣の任命や国会の召集・解散や総選挙の執行を拒絶した時には(続く)」
㉕「(承前)どうなるか。この憲法には拒絶しないという保障は一つもありません。ここに、わが国の政治の将来にとって重大な危険があるとわれわれは考えるものであります。過去の日本の歴史にあっては、官僚や軍閥が天皇の特権を利用してあらゆる虐政を行って来た。この憲法草案では(続く)」
㉖「(承前)そのようなことが将来ふたたび起こらないという保障はないのであります。天皇の特権的地位が、将来ふたたび官僚や保守反動勢力の要さいとならないという保障はないのであります。わが共産党が当憲法に賛成しない理由もここにあるのであります…われわれは、日本の将来のために、(続く)」
㉗「(承前)子孫の将来のために、民主主義のために、少しでも反動的に利用され得るような条項を含む憲法にどうしても賛成することはできない。われわれは、草案の第1章(天皇諸条項)は民主主義に反する規定であると認める。ここにわれわれがこの草案に反対する第二の理由があります。(続く)」
㉘「(承前)以上のごとく天皇を規定する第1章は、古き天皇制を新しい形において残さんとするものである。これは明らかに反民主的規定である」。〈注〉共産党は現憲法が国会で可決される際、天皇条項を大きな理由の一つとして反対した。女性天皇制に賛成する共産党のいまの幹部の変質は明らかである。
㉙野坂氏の発言は、当時の共産党を正式に代表したもので、彼の晩年の除名(1992年)で信ぴょう性がなくなるものではない。共産党は、憲法の基本精神、主権在民に反するから象徴天皇制に反対した。女性天皇・女系天皇といえども主権在民に反する。共産党は合理性のない屁理屈をいうべきではない。
㉚「赤旗」1月19日付の非合理性に、うんざりする。まず「多様な性を持つ人々によって構成されている日本国民の統合の『象徴』」という理屈。憲法は「日本国民統合の象徴」と天皇を規定するが「多様な性」云々の形容句はない。天皇は女性差別の象徴という方が当たっている。
㉛憲法にない文句で女性天皇を合理化するのは、詭弁であろう。日本国民が「多様な性を持つ人々によって構成されている」という事実の摘示は、性差別の解消(国民統合?)とは関係がない。天皇制は封建的貴族制度の一種であり、性差別と同じく、世襲という生まれながらの属性による人間の差別である。
㉜象徴天皇制が憲法14条の法の下の平等原則と矛盾していることは、国家予算でも明らか。2021年度政府予算には「皇室費」124億円余が計上されている。これが象徴天皇を維持するための税金投入額だ。さらに皇居など広大な国家財産を無償で貸与。これを身分差別といわずして何というのだろう。
㉝「赤旗」の記事は続けて「女性天皇を認めることは、日本国憲法の条項と精神に照らして合理性を持つと考える」とも言う。しかし、男性天皇が破格の特権的身分を持つ現状を是認し、加えて天皇家の女性も天皇として認めよという言説が、はたして法の下の平等などの憲法の精神に沿うことになるだろうか。
㉞コロナ禍で職を失い、あすの食材にも困る国民が多数でているときに、ただ天皇家に生まれたという理由だけで、税金を使って最高に豪華な生活をすることができる人たち。共産党は本当に「天皇制廃止?絶対にしません」と断言していいのか。
〈朝日新聞~「天皇制廃止?絶対しません」共産リーフレット作成「不安」解消狙う〉
2022年1月29日