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(2025年1月10日からの閲覧回数)


拙速だった共産党の吉田証言否定
(2024年10月26日~のツイート再録)
     フリージャーナリスト・今田真人
〈注〉ツイートは、新しい経営者イーロン・マスク氏によって「Xへのポスト」と名称変更したが、逆に意味不明になるので、私は旧来の名称のまま使用する。


共産党の吉田証言否定の判断があまりに拙速だったことを示すのが2014年8月10日のフジテレビでの小池晃氏の発言。朝日新聞が吉田証言を取り消した同年8月5日付から4日間しか経っていないのに「(吉田証言は)信憑性がないことがはっきりしている」と断定した。(「赤旗」同年8月12日付)






小池晃氏の発言をネットに残る同番組で視聴すると、秦郁彦氏の見解の全面肯定、クマラスワミ報告の真逆の解釈など、誤りがてんこ盛りである。結局、朝日新聞の「検証記事」の4日後に出した共産党幹部の独断を最初から結論にして、「赤旗」同年9月27日付の「検証記事」を作文したという他はない。


(フジテレビ2014年8月10日放送「新報道2001」から)


なお、クマラスワミ報告については、以下のリンクで、私の論評を参考にしてほしい。
http://masato555.justhpbs.jp/newpage132.html


小池晃氏はフジテレビ出演当時、日本共産党の副委員長・政策委員長だった。現在は書記局長。その人が当時、クマラスワミ報告について、こう言っている。「あれ見ますとね、確かに吉田証言、出てきます。しかし、その後で、秦郁彦さんの証言も出てくるわけです。(続く)
【クマラスワミ報告はこちらのリンクに全文あり】


(承前)で、吉田証言はそこで否定されている」。しかし、実際のクラスワミ報告は、秦郁彦証言も吉田証言も、小池晃氏のいうような位置づけになっていない。クマラスワミ報告は「歴史的背景」の「A.総論」として「1932年に制定された国家総動員法は、戦争末期の数年までは全面的に(続く)


(承前)施行されなかったが、日本政府がこの法律を強化するにいたり、男性も女性も戦争に協力することを求められた。これとの関連で、表向きは日本軍を助けるために工場で働いたり、その他の戦争関連の任務を遂行する女性を徴用するという目的で女子挺身隊が設立された。(続く)


(承前)だが、これを口実に、多くの女性が騙されて軍の性奴隷として働かされることになり、挺身隊と売春との関連はすぐに広く知られるようになった。最終的には、日本人は暴力を使ったり公然と強要して、高まる軍の需要を満たす女性を集めることができたのである。非常に多くの女性被害者が、(続く)


(承前)娘が連行されるのを阻止しようとした家族に暴力が加えられたと語り、時には無理矢理連れて行かれる前に両親の目の前で兵隊にレイプされたと言う。ヨ・ボクシルについての調査によれば、彼女も多くの少女と同様に家で捕らえられ、娘を取られまいと抵抗した父親が暴行されたあげく(続く)


(承前)連れ出されたという」と書いている。これはクマラスワミ報告の本文であり、朝鮮人「慰安婦」被害者の証言に基づき、書かたものである。そのあとの項に、吉田証言が、この本文を裏付ける形で出てくる。「1942年までは、朝鮮人警察官が村へやってきて『女子挺身隊』を募集した。(続く)


(承前)これによって日本政府が認める公式の手続きになると同時に、ある程度強制力を持ったのである。…それ以上にまだ女性が必要とされた場合は、日本軍は暴力的であからさまな力の行使や襲撃に訴え、娘を誘拐されまいと抵抗する家族を殺害することもあった。こうしたやり方は国家総動員法の(続く)


(承前)強化でさらに促進された。1938年に成立したこの法律は、1942年以降はもっぱら朝鮮人の強制連行のために使われたのである。元慰安婦の多くは、連行される過程で暴力や強制が広く行われていたことを証言している。さらに、強制連行を行った一人である吉田清治は戦争中の(続く)


(承前)体験を書いた中で、国家総動員法の一部である国民勤労報国会〈今田注・大日本労務報国会の翻訳間違い〉の下で、他の朝鮮人とともに1000人もの女性を『慰安婦』として連行した奴隷狩りに加わっていたことを告白している」。つまり吉田証言は同報告を裏付けるという位置づけである。(続く)


(承前)一方、そのあとに出て来る秦郁彦証言は、クマラスワミ報告の主張と違う異論という位置付けである。そのまま引用すると次のようになる。「千葉大学の歴史学者秦郁彦博士は『慰安婦』問題に関するある種の歴史研究、とりわけ韓国の済州島の『慰安婦』がいかに苦境に置かれたかを書いた(続く)


(承前)吉田清治の著書に異議を唱える。秦博士によれば、1991年から92年にかけて証拠を集めるために済州島を訪れ、『慰安婦犯罪』の主たる加害者は朝鮮人の地域の首長、売春宿の所有者、さらに少女の両親たちであったという結論に達した」。責任は少女を売買した親や業者というものだ。(続く)


(承前)吉田証言に「異議」を唱え、「慰安婦犯罪」の責任が日本政府になく、朝鮮人業者や娘の親にあるという秦郁彦証言が、クマラスワミ報告の主張であるはずもない。クマラスワミ報告で「吉田証言は否定されている」という小池晃氏は、テレビ番組の中で極右の出演者らにバカにされたが当然である。


このフジテレビ番組を全部視聴したい方は消されないうちに、以下のリンクで見てください。登場人物は、維新の橋下徹氏(当時・大阪市長)や自民の萩生田光一氏(当時・安倍晋三総裁特別補佐)、弁護士の野村修也氏など。本日(注→2024年10月27日のこと)投票の衆院選で注目の、あの萩生田さんである。

【新報道2001_朝日従軍慰安婦問題_2014.8.10 - ニコニコ動画】


野村修也氏はウィキペディアによると、2012年1月に橋下徹・大阪市長より大阪市特別顧問に任命され、明確に憲法違反である、市職員の政治活動などの調査を実施した。維新や自民の極右が登場人物の吉田証言検証番組に出て、小池晃氏は「権力に射落とされた」のかも。

『ウィキペディア(Wikipedia)』野村修也


私は吉田証言を取り消した「赤旗」の検証記事(2014年9月27日付)を繰り返し批判しているけど、この検証記事も当時、「赤旗」の大スクープとして、共産党は大宣伝した。共産党の基本路線にかかわる、この誤報を撤回しないかぎり、私は共産党を信頼することはできない。


「河野談話には、ああいう暴力的な連行などということは書いてない」「吉田証言を河野談話は採用してない」とまで言う小池晃氏。「吉見さんと秦さんという人は吉田証言を否定してる人なんですよ」と味噌もくそも一緒にして、河野談話の「強圧による」連行の指摘まで否定する道理のなさに唖然とする。


(フジテレビ2014年8月10日放送「新報道2001」から)


河野洋平氏は宮沢内閣の官房長官であり、宮沢首相は閣議決定を経た答弁書で「(吉田証言を)調査にあたり充分に参考にしてきている」と言明。河野談話の作成当事者として「赤旗」が持ち上げる、石原信雄・元官房副長官の「(同証言は)眉唾もんだ」の発言も疑わしい。(続く)


【参照ツイート】
共産党の吉川春子参院議員が1992年11月6日、当時の宮澤首相へ出した質問主意書。その中で吉田清治氏ら強制連行の加害者からも聞き取り調査をすべきだと質問。宮澤首相は「調査にあたり充分に参考にしてきている」という答弁書も出している(同年11月27日、閣議決定)。


(承前)石原信雄氏は河野談話作成時の官房副長官だが、同談話の直接の責任官僚は谷野作太郎内閣外政審議室長(当時)である。彼は河野談話の否定論に批判的である。毎日新聞2013年8月28日付夕刊の記事「特集ワイド――『河野談話』『村山談話』谷野作太郎・元駐中国大使に聞く(下)」で(続く)






(承前)谷野氏の主張には全面的には賛成できないが、事実を証言した部分には重みがある。写真の1段目「私の韓国の友人。…」以下の文章がすばらしい。「…彼は『子供のころ、自分の村では年ごろの娘を外に出すなと言われたものだ。それでも彼女らが横付けされたトラックに乗せられ、(続く)


(承前)泣き叫びながら連れ去られていくのを目にしたことがある。そこにはオマワリやヘイタイもいた……』と」。谷野氏はこういう韓国の友人の証言を尊重し、河野談話の精神を踏まえて否定論を批判している。谷野氏はのち毎日新聞に答えて、吉田氏のヒアリング時の様子を具体的に語っている。(続く)


(承前)毎日新聞2014年9月11日付の特集記事「朝日『慰安婦報道 点検』をめぐって」である。記事は全体として毎日新聞も時流に乗って、朝日に続いて吉田証言を否定したものだが、その中に谷野作太郎氏のコメントがある。「(吉田氏は)当時有名人になっていて、(続く)




(承前)外政審議室の若い人たちが2回ほど会ったが、興奮して話にならなかったので採用しなかった」と話している。なぜ吉田氏は「興奮」したのか。その答えは拙著『吉田証言は生きている』収録の吉田氏の発言にある。吉田氏を脅した犯人のバックに「外務官僚」がいたという(拙著P58)。(続く)


(承前)外政審議室長が当時、外務官僚の谷野作太郎氏だから、吉田氏の恐怖心も相当であっただろう。いずれにしても外政審議室の吉田氏のヒアリングは、石原氏のいうような内容的に「眉唾もんだ」というものではなく、谷野氏のいうように「興奮して話にならなかった」というのが事実らしい。(続く)


(承前)石原氏について言えば、彼は1997年4月9日の「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」(事務局長・安倍晋三氏)の講演では、韓国の16人の元「慰安婦」への聞き取りについて「誠に聞くに耐えないような状況で承諾させられた、あるいは募集に応じさせられたという(続く)


(承前)ケースがあり」「ヒアリングを行った担当官の心証としては、これは明らかに本人の意に反する募集があったということは否定できない、という報告でございました」とのべ、河野談話の事実上の強制連行との指摘を擁護していた。ところが石原氏は2012年末からの第2次安政権下で変節。(続く)


(承前)産経新聞2013年10月16日付の韓国の元「慰安婦」16人の聞き取り調査報告書の暴露記事に石原氏が登場。元「慰安婦」の中に生年月日や氏名などが明記されていないものが多いなどの指摘に「真実を語れる人、というのが調査の前提だった。その日本側の善意が裏切られた」と発言。(続く)




(承前)この辺から石原信雄氏は河野談話否定の「語り部」となる。そして2014年8月5日付の朝日新聞の「検証記事」を受けて、同年9月11日放送のテレビ朝日「報道ステーション」に登場。吉田証言を「眉唾もんだ」と発言。それを「赤旗」の検証記事がそのまま事実として取り上げたのである。


それでも、あなたは吉田証言についての「赤旗」の「検証記事」を信じますか?
(参考)「赤旗」2014年9月27日付の「検証記事」~「歴史を偽造するものは誰か――『河野談話』否定論と日本軍『慰安婦』問題の核心」
https://jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-09-27/2014092704_01_0.html


こういう上原亜衣さんの、まっとうな感想に群がる、日本人ネトウヨの大量のコメントが残念すぎる。日本人ネトウヨを国民の税金も使って増やした安倍政権と自民党や、それに屈服・加担した、日本共産党の吉田証言否定の一連の見解の罪は重い。
https://msn.com/ja-jp/news/entertainment/…


韓国に取材に行ったら、私もぜひ、上原さんのように西大門刑務所記念館を見学したい。
【西大門刑務所歴史館】


韓国に取材に行ったら「戦争と女性の人権博物館」も見学したい。
【戦争と女性の人権博物館】
リンク先の記事で紹介されている、金順徳(キム・スンドク)が描いた「連行(1995)」という絵(写真)を見て、吉田証言のような強制連行を「信ぴょう性がない」と言った小池晃氏の発言に改めて怒りを感じる。




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