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(2016年7月17日からカウント)


☆リポート「イカ漁いっせい休業と『イカ調整品』の輸入増加」


連載D(最終回)「〇〇うどん」の「いか天」

(2013年5月27日初稿、何回かの改定後の5月29日に確定)
          経済ジャーナリスト 今田真人


 原産地は「中国」

 「〇〇うどん」(企業名は仮名)の「イカ天」は、私の大好物です。
 都心に出かけるときには、つい、行き付けの店に入り、「いか天」や「げそ天」を載せた「ぶっかけ」を食べています。
 「讃岐うどん」を売りにしている店なので、国産志向の客に人気のようです。
 ところが、今回、小型イカ漁いっせい休業問題を取材し始め、この「いか天」のイカの原産地が気になり始めました。
 もし輸入ものなら、小型イカ釣り漁の関係者を苦しめる結果になるのではないか。
 インターネットで「〇〇うどん」のホームページを探し、その「よくある質問」のページを見ましたが、イカの原産地は書かれていません。
 そのため、同店の「お客様相談室」に電話し、聞いてみました。
 同店の担当者の男性は言います。
 「イカの原産地は、基本は中国です。時期によっては、他の外国からも輸入しています。種類はアカイカ。下味を付けて加熱し、カットして冷凍し、日本に輸入しています」
 イカの輸入形態は、「イカ調整品」で、輸入割当(IQ)の対象ではない、ということでした。
 同社の正直な対応は好感が持てますが、はっきり言って、ショックでした。


 国内の加工産業がそっくり中国に

 水産物の輸入の歴史に詳しい、全国漁業協同組合連合会(JF全漁連)の漁政部長、高浜彰さんは言います。
 「イカの加工品には、さまざまなイカの種類が使われていますが、例えば天ぷらには太平洋で獲れるアカイカが使われる場合が多い。こうしたイカ調整品が海外から入ってきています。いまや外食産業の水産物の多くが、海外で加工したものを含めて、輸入品となっています」
 このイカ調整品の輸入が増える前は、日本漁船が獲ってきたイカは、東北地方など、日本国内の漁村で加工して売っていたと言います。それが、漁村の産業や雇用を支えていました。
 「水産物の加工は、人の手でやらないとできません。それが、加工賃が安いからという理由で、そっくり、中国に行ってしまった」と、高浜さんは残念がります。


 小型イカ釣りは日本の漁村を支える重要な産業

 イカ調整品など、加工水産物の輸入増加が、漁村の産業を衰退させ、国産の水産物の価格を押し下げているのです。
 そして、高浜さんは、次のように訴えました。
 「スルメイカは、国内で携わる者が最も多い水産物の1つ。小型イカ釣りは日本の漁村を支える重要な産業です。そこが倒れると、日本の漁村が危うくなります。われわれは、円安による燃料費の高騰を価格に転嫁できない。一方、他の産業は売価に転嫁して値上げすることもできます。政府の景気浮揚策を否定するものではなく、景気が良くなって魚価が上がることを漁業者は期待していますが、そうなるまでには時間を要します。それまでの間、漁業者を支える政策を打っていただきたい。また、TPP(環太平洋連携協定)については、関税なども含めて漁業への影響は大きなものがあります。食料自給率を下げる方向に向かうことは問題ではないか」



〇〇うどんに載せる「イカ天」(右の皿の左端)=写真は一部修正しています=



全漁連漁政部長の高浜彰さん


(連載おわり)


☆各回へのリンク
 連載@国内漁獲量が3分の1に
 連載A「がんばっていて赤字というのはつらい」と漁師
 連載B卸売価格が暴落
 連載C輸入割当の効果と限界
 連載D「〇〇うどん」の「イカ天」


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