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(2016年7月17日からカウント)


☆リポート「イカ漁いっせい休業と『イカ調整品』の輸入増加」


連載B卸売価格が暴落

(2013年5月17日初稿、何回かの改定後の5月21日に確定)
          経済ジャーナリスト 今田真人


 漁師の想定を下回る今月最低価格に

 石川県漁業協同組合によると、16日午前11時から開催された卸売市場「かなざわ総合市場」で、スルメイカの価格は、5月中最低を記録しました。(表@、グラフA参照)
 最も漁獲量の多い指標的な「30入り」1箱(スルメイカ30匹が入ったケース、5キログラム)の中値は、石川県でのイカ釣り解禁がされた5月初旬には3500円を記録していたのに、どんどん下落。
 私が取材した16日は、1箱1200円と、今月で最低の価格まで落ちました。暴落と言ってもいい事態です。
 連載Aで紹介した長崎県の船長の男性は、16日に110箱の漁獲量だったということでした。同日早朝の時点で、1箱1500円と想定し、売り上げが16万5000円になるので、採算点の15万円をぎりぎり上回ると安心していました。
 しかし、1箱が1200円になると、110箱の売り上げは13万2000円。これでは、人件費が出ないどころか、1万8000円の赤字(持ち出し)になってしまいます。 
 ちなみに、16日早朝に金沢港へスルメイカを水揚げした小型イカ釣り漁船は45隻。「かなざわ総合市場」の取引数量1万7689箱の4分の1が金沢港の水揚げだったといいますから、1隻あたりの平均漁獲量は98箱です。
 1箱1200円では、98箱の漁獲量では11万7600円の売り上げにしかなりません。
 この日の平均的な漁獲量では15万円を下回り、ほとんどの小型イカ釣り漁船は赤字に追い込まれたことになります。
 小型イカ釣り漁船の乗組員は平均して3〜4人。45隻合計では約160人の乗組員が働いていることになります。その人たちの給与が出ないばかりか、船長は持ち出しを覚悟しなければなりません。
 あの日、漁師らの口が固かったのは、疲れだけではなかったのかと、苦い思いがこみ上げてきました。


 大手量販店・スーパーなどが価格を決定

 石川県漁業協同組合の常務理事、河崎浩さんは言います。
 「イカの卸売価格は他の魚と同様に、消費者に近い『川下(かわしも)』の大手量販店・スーパーが決めているのが現実です。われわれ漁協・漁師には価格決定権がない」
 昔は市場原理が働き、コストが高くなれば、当然、価格は上がりました。しかし、いまは、どんなに円安で燃料費が高騰しても、イカの単価は下がり続けていると。
 これから、スルメイカが日本海を北上していくと、漁獲量はもっと増え、価格はさらに下がることが予想されると指摘します。
 「このままでは、漁師はイカを獲れない。そうなると、消費者が国産のイカを食べられなくなる」
 そう強調した河崎さんは、政府に対して、水産業を日本の食料産業として、しっかり位置づけ、それを守る強力な施策を講じることを求めました。

 (表@)スルメイカの総卸売数量と卸売価格

卸売数量(箱) 「30入り」1箱の中値(円)
5月3日 504 3,500
5月6日 1,887 2,800
5月7日 1,489 3,000
5月8日 2,506 3,000
5月9日 4,599 2,500
5月10日 11,559 1,800
5月12日 17,020 1,300
5月13日 14,150 1,500
5月14日 11,101 1,400
5月15日 16,347 1,400
5月16日 17,689 1,200

 〈注〉石川県漁業協同組合のHPのデータから作成。数字は「かなざわ総合市場」での取引数量と価格。卸売数量は、金沢港だけでなく、石川県内の各漁港で水揚げされたものの合計。また、卸売数量は「25入り」「30入り」「40入り」「バラ」の合計で、1箱5キログラム入りとして箱数を計算。「30入り」1箱の中値は、指標的な価格として紹介。

(グラフA)スルメイカの総卸売数量と卸売価格

〈注〉諸条件は、表@と同じ。


 水揚げされたスルメイカ=16日早朝、石川県の金沢港水産埠頭


 卸売市場でのセリの様子=16日午前11時過ぎ、石川県の金沢港「かなざわ総合市場」


イカ釣り漁業の危機について話す石川県漁業協同組合の常務理事、河崎浩さん=16日午前、金沢港内の同組合事務所

☆ユーチューブで、金沢港での取材映像が視聴できます。下線のある文字をクリックしてください。
 ◎小型イカ釣り漁の過酷な労働実態などを話す石川県漁業協同組合かながわ総合市場長の坂口錦吾さん(3013年5月16日早朝)
 ◎水揚げされたスルメイカをセリにかける卸売市場の「かながわ総合市場」(3013年5月16日午前11時すぎ)


 (連載Cにつづく)


 ☆各回へのリンク
 連載@国内漁獲量が3分の1に
 連載A「がんばっていて赤字というのはつらい」と漁師
 連載B卸売価格が暴落
 連載C輸入割当の効果と限界
 連載D「〇〇うどん」の「イカ天」

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