(2016年7月17日からカウント)
☆リポート「イカ漁いっせい休業と『イカ調整品』の輸入増加」
連載@国内漁獲量が3分の1に
(2013年5月13日初稿、何回かの改定後の5月20日に確定)
経済ジャーナリスト 今田真人
円安による燃料費高騰で2日間休業
「全国いか釣漁業協議会」(能登博之会長)は4月23日、農水省などで記者会見し、急激な円安に伴う燃油価格高騰とイカの価格低迷で、廃業するかどうかの瀬戸際に立たされているとして、小型イカ釣り漁船(全国約4千隻)が4月26、27日に一斉休業すると発表しました。また、同協議会が加盟する全国漁業協同組合連合会(JF全漁連)は5月29日午後1時から、東京都千代田区の日比谷野外大音楽堂で、大規模な集会を開催することも明らかにしました。
急激な円安で、漁業用の価格指標となる国内原油価格は3月に1キロあたり6万2930円と、半年前の2012年9月の同5万4700円と比べ、15%上昇しています。(水産庁調べ)
政府は2010年度から「漁業経営セーフティネット構築事業」を創設。漁業者と国の拠出により、燃油価格が高騰したときに、漁業者向けに、一定基準を超える燃油価格を補てんしています。しかし、この制度も基準が高いなど、十分とはいえません。
一方、イカ価格低迷の原因について、 JF全漁連の担当者は「輸入ものの影響が、かなりあるのでは」と示唆します。
イカの輸入の実態とその影響を探りました。
輸入量が一定なのに国内漁獲量が激減
財務省の貿易統計で、さかのぼることのできる1988年から、イカの輸入量の年推移を調べました。(グラフ@)
これをみると、1988年の輸入量は10万5611トンで、直近の2012年は9万3211トン。ほぼ毎年、10万トン前後で推移しています。
一方、水産庁の水産統計情報で、イカの国内漁獲量を調べると、1988年は66万3797トンでしたが、2012年には21万3500トンと3分の1に激減しています。(グラフA)
これから読み取れるのは、イカの国内自給率が1988年当時の86・3%から、2012年の69・6%に、約16・7ポイント下落したという事実です。(表B)
しかし、この統計には、いくつかの疑問が生じます。
まず、輸入量と国内漁獲量を合計した国内消費量(わずかな輸出量を無視)が、1988年の76万9408万トンから、2012年の30万6711トンに半分以下になったというのは、本当かということです。
日本人は、この24年間にイカをそんなに食べなくなったのでしょうか。
また、24年間、輸入量がほぼ年間10万トン前後で推移しているのに、なぜ、国内漁獲量が3分の1に激減したのかということです。
こうした疑問を追ううちに、いろいろな事実が浮かびあがってきました。
(@イカの輸入量の推移)
(単位:トン)
(Aイカの国内漁獲量の推移)
(単位:トン)
(Bイカの自給率の推移)
(単位:トン)
@輸入量 | A国内漁獲量 | @+A=B | 自給率A/B | |
1988年 | 105,611 | 663,797 | 769,408 | 86.3% |
1989年 | 119,265 | 733,594 | 852,859 | 86.0% |
1990年 | 117,449 | 564,790 | 682,239 | 82.8% |
1991年 | 100,005 | 544,916 | 644,921 | 84.5% |
1992年 | 104,826 | 677,005 | 781,831 | 86.6% |
1993年 | 101,371 | 583,152 | 684,523 | 85.2% |
1994年 | 118,410 | 589,405 | 707,815 | 83.3% |
1995年 | 89,345 | 546,964 | 636,309 | 86.0% |
1996年 | 110,456 | 663,141 | 773,597 | 85.7% |
1997年 | 97,851 | 635,072 | 732,923 | 86.6% |
1998年 | 95,720 | 385,363 | 481,083 | 80.1% |
1999年 | 108,885 | 498,128 | 607,013 | 82.1% |
2000年 | 101,083 | 623,887 | 724,970 | 86.1% |
2001年 | 85,484 | 520,982 | 606,466 | 85.9% |
2002年 | 99,198 | 434,215 | 533,413 | 81.4% |
2003年 | 86,135 | 385,803 | 471,938 | 81.7% |
2004年 | 95,334 | 348,890 | 444,224 | 78.5% |
2005年 | 98,133 | 329,942 | 428,075 | 77.1% |
2006年 | 98,112 | 286,289 | 384,401 | 74.5% |
2007年 | 107,467 | 325,689 | 433,156 | 75.2% |
2008年 | 91,103 | 289,962 | 381,065 | 76.1% |
2009年 | 81,671 | 295,837 | 377,508 | 78.4% |
2010年 | 80,746 | 266,701 | 347,447 | 76.8% |
2011年 | 92,300 | 298,379 | 390,679 | 76.4% |
2012年 | 93,211 | 213,500 | 306,711 | 69.6% |
スーパーで売られている輸入イカを使った商品(1袋248円だった)
この商品のビニール袋の裏書には、いかの原産地が中国と書かれている
(連載Aにつづく)
☆各回へのリンク
連載@国内漁獲量が3分の1に
連載A「がんばっていて赤字というのはつらい」と漁師
連載B卸売価格が暴落
連載C輸入割当の効果と限界
連載D「〇〇うどん」の「イカ天」