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(2016年7月17日からカウント)


☆(リポート)「骨なし魚」の原産地を訪ねて――中国・青島探訪記


連載A不安いっぱいの旅

 (2013年11月14日初稿、何回かの改定後の12月15日に確定)
       経済ジャーナリスト・今田真人


NHK海外放送の画面が真っ黒に

 地図をみれば明らかなように、中国・山東省は、日本から最も近い省の一つだが、もちろん、日本とは政治も文化も違い、言葉も通じない外国である。今回の中国訪問は私にとって、10年前に観光旅行で北京市に行ってから2回目だが、不安がいっぱいだ。
 青島空港からタクシーで約45分。青島市内の中心市街地(新市街地)に予約している4つ星ホテル(5段階で上から2番目の高級ホテル)があった。
 1日目は、ホテルで自重。なんといっても一人で外を歩くのは怖い。日本を出発する前、いろいろな知人・友人に、尖閣諸島問題や昨年の反日暴動などを例に挙げられて、「日中間の関係が最悪のときに、わざわざ行かなくても」「一人であまりうろうろすると危ない」などと忠告されていたからだ。
 早朝からの旅路で少々疲れた私は、ホテルの部屋で数時間、ベッドで眠る。午後8時ごろから起き出し、鉱物臭がし、湯水があまりきれいでないシャワーを浴びる。
 そして、ホテルの部屋のテレビで中国の現地放送や日本のNHKの海外放送(NHKワールド)を視聴した。
 中国の国営放送CCTVがたくさんのチャンネルを持ち、ニュースや娯楽、スポーツと並んで、軍事専門のチャンネルがあるのには驚いた。軍用機や軍艦、軍事訓練の様子がずっと流れている。また、国営放送なのに自動車や食品などのコマーシャルが流れるのもおもしろい。
 NHKの海外放送では、最近の中国でキリスト教の信仰の自由が拡大されているという特集(帰国して確認した番組のタイトルは「中国で拡大するキリスト教」(NHKワールド「中国で拡大するキリスト教」)をやっていた。
 タイムリーなので、少し見ていると、「北京では一昨年、政府の管理を拒否し、屋外で礼拝を開こうとした家庭教会が摘発を受けました」というナレーションが流れた直後、突如、画面が真っ黒になった。検閲による報道管制がされているようだ。
 1分余りの間、真っ黒な画面が続いた後、また、元の特集が放映され始める。中国社会では報道の自由がなく、国民の知る権利もないことを示すショッキングな事件だ。
 外国人である私が、どこまで本当の事実を知ることができるのか、見てはいけないものをビデオに撮ると当局に拘束されるのではないか。2日目からの旅路の困難な前途を示すようで、暗澹たる気持ちになる。


ドイツと日本に占領された歴史持つ旧市街地

 2日目は、1日中、中国の旅行業者に頼んで、自動車1台(中国人男性の運転手一人)に乗り、日本語ガイドの中国人女性の案内で、市内観光をした。
 それぞれの場所の見聞を紹介したいが、今回の記事の主題から外れるので、簡単に触れたい。
 見学したのは@小魚山公園Aキリスト教会B迎賓館C天主経堂D小青島E八大関――の旧市街地の8カ所だった。
 青島の近代史を旅行会社の情報などから、簡単に説明する。
 中国山東省の東端、黄海に面した港湾都市である青島は、19世紀後半の清代末期から、西欧列強が中国国内に植民都市を建設する中、1897年、ドイツが占領。
 その後、第一次世界大戦後の1919年のパリ和平会議の結果、戦勝国になった日本は、青島を含む膠州湾にあったドイツ占領地域(膠州湾租借地)を敗戦国のドイツから奪った。
 このため、膠州湾租借地の返還を求める大規模な民族独立運動である「五四運動」が起こり、1922年に同地は中国に返還された。
 しかし、1938年に再び日本が占領。第二次世界大戦での日本敗戦の結果、1945年9月に中国の国民党政府が青島を接収。さらに1949年6月2日、「中国革命」により中華人民共和国の領有する地域になった。
 私が案内された青島市旧市街地の観光スポットは、ドイツ風の赤い屋根の家屋や迎賓館(ドイツ総督の住居)、キリスト教会など、これらの近代の歴史を色濃く残しているのが特徴だった。
 この日は、各観光スポットで、中国国内や韓国からの観光客が目立った。とくに、白いウエディングドレスやタキシードを着た中国人や韓国人の若いカップルが目立ったが、これは結婚前に有名な観光スポットで記念撮影するのが流行しているためだという。
 ただ、どこでも日本人観光客は私1人のようで、少しさみしい状況だった。最近の日中間の政治的対立が原因のようだ。中国人女性の日本語ガイドは「日本人観光客が最近、激減して困っている。政治は私たち庶民には関係ないはず。私たちは、日本人を歓迎している」と訴えていたことが印象に残る。
 


【地図】大韓航空機で私が飛行したコースは、日本・成田→韓国・ソウル→中国・青島で、ほぼ直線





上の3枚の連続写真は、NHKの日本語海外放送「中国で拡大するキリスト教」が突如、真っ黒な画面になる様子(真ん中の写真は、モザイク状に画面が黒くなる瞬間をとらえた)=2013年10月21日夜、中国・青島市のホテル内のテレビ


☆上記の中国当局によるNHK放送の中断の模様は、たまたまビデオ撮影していたので、ユーチューブでもご覧いただけます。ここをクリックしてください。



中国人の新婚カップルの記念撮影で賑わう天主経堂(カトリック教会)の前庭=2013年10月22日、中国・青島市


市役所の前に広がる「五四広場」には、「五四運動」を記念する赤いオブジェ「5月の風」が建っている=2013年10月24日午前、中国・青島市


連載Bにつづく


☆各回へのリンク
 連載@3泊4日の旅の動機
 連載A不安いっぱいの旅
 連載B経済技術開発区に出発
 連載C骨なし魚工場に到着
 連載D中国と日本の賃金格差

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