（２０１６年７月１７日からカウント）

☆（リポート）「骨なし魚」の原産地を訪ねて――中国・青島探訪記

連載①３泊４日の旅の動機

　（２０１３年１１月１４日初稿、何回かの改定後の１２月１５日に確定）
　　　　　　　経済ジャーナリスト・今田真人

ずいぶん遠くまで来たもんだ

　最近、日本のコンビニで、魚の小さな骨を取り除いて調理した、いわゆる「骨なし魚」が目立つようになった。その原産地表示を見ると、「中国」という表記が多い。
　また、「骨なし魚」は、外食産業の業務用や病院食などに急速に普及している。
　魚の骨を取り除く作業は、細かくて機械化ができない。その骨を取り除く手作業はこれまで、日本の漁村を支えてきた。それが、外国為替の独特の仕組みで人件費が格段に安い中国にそっくり移りつつあるという。
　中国の水産物加工製品（魚介類の調整品）の輸入は、２０００年に入って急増している。
　その輸入増加が、日本の水産物の価格低迷の主因となり、日本漁業に大きな打撃を与えていることも、２０１３年春の小型イカ釣り漁業の一斉休業などで改めて浮き彫りになった。
　その流れを止め、日本の漁村を守りたい。そのためにも、その現場を一度、この目で見たい。そうすれば、いろいろな発見があるのではないか。これが、今回の中国・青島市への旅行の動機である。
　中国山東省とその最大都市・青島市は、日系企業による水産物加工工場や中国企業の委託加工貿易が盛んである。
　１０月２１日月曜の午前４時前に起床。まだ真っ暗な都内の自宅を午前４時に出発。３泊４日の中国・青島への旅行である。
　自宅から電車で約３時間かけて成田国際空港に着く。大韓航空機で、成田を午前９時２５分に出発。インチョン空港（韓国ソウル）を経由し、中国の青島（チンタオ）空港（青島流亭国際空港）まで、約４時間１５分の行程だった。
　ずいぶん遠くまできたものである。

異臭のする大気汚染にびっくり

　中国語がほとんどできない私は、空港のタクシー乗り場の案内人に、大学ノートにあらかじめ書いておいたホテルの中国名と住所、「この場所に行ってください」という意味の中国語を指差し、「チンダオジャーリ」と、片言の中国語を恐る恐る言った。
　何とか通じたようで、タクシーに乗り込むことができた。冷や汗ものである。
　外は曇り、と思ったが、違った。魚が腐ったような、あるいは、ゴムが腐ったような異臭があたりに漂う。異臭のする大気汚染で空が覆われ、晴れなのに曇りのような天気なのである。
　青島は海辺の都市だから、「ＰＭ２・５」と呼ばれる大気汚染はそれほどではないと思っていたが、予想以上のひどさにびっくり。
　青島には３泊４日滞在したが、初日から３日目まで、大変な大気汚染だった。２日目に参加した旅行業者による市内観光では、小高い山の上から市街地が一望できるといううたい文句の場所でも、高層ビルが林立する街並みは、ほとんど見えなかった。
　海岸沿いなのに大気汚染がひどい理由について、青島は雨が少なく、浮遊する汚染粒子が雨とともに落ちないからと、中国人の日本語ガイドが言っていた。
　ちなみに、山東省の年間降水量は７２４ミリ、東京は同１５２８ミリ。山東省の降水量は、東京の半分以下である。

「魚介類の調整品」の輸入

〈注〉財務省・貿易統計から作成

コンビニで売られる真空パック入り「骨なし魚」。裏面には「原産国名・中国」という表示が…

乗り継ぎをした韓国・ソウルのインチョン国際空港＝２０１３年１０月２１日昼

韓国・ソウルを出発し、中国・青島に向かう大韓航空機の窓から外を望む＝２０１３年１０月２１日昼

大気汚染で白くかすむ旧市街地のドイツ風建物＝２０１３年１０月２２日、中国・青島市

市南部の海水浴場から望む新市街地の高層ビル群＝２０１３年１０月２２日、中国・青島市

（連載②につづく）

☆各回へのリンク
　連載①３泊４日の旅の動機
　連載②不安いっぱいの旅
　連載③経済技術開発区に出発
　連載④骨なし魚工場に到着
　連載⑤中国と日本の賃金格差